4月1日の“MICK”
毎年、この日が来ると彼のことを思い出す
『ミック』
君は今晩も何処かのBarで飲んでいるのだろうか?
彼が訪れたのは数年前の4月1日、キャップを斜めにかぶり、
ヘッドフォンから“シャカ”“シャカ”と音を漏らしながら店内に入ってきた。
カウンターの真ん中に座り、徐にポケットから携帯と小型のスピーカー
もう片方のポケットからキューバ産のシガレットを3箱。
瞬く間にカウンターが彼の私物のヤマに・・・
オーダーは“ジン&ビターズ”
ビターズをリンスし、ロックグラスに大ぶりの氷を放り込み、マスターはその上からジンを注いだ。
隣に座っていた常連Kさんが彼に興味を持ち、話しかけた。
「よく来られるんですか?」
「ずっと海外で仕事してまして、日本は久しぶりなんです」
とミックは微笑んだ。
その調子で、海外での自分の仕事の話をしはじめたミック
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最終的には、ディズニーのキャラクターをデザインし、その版権を持っているという
話にまでになった。
二杯目はK氏から「ジン&ビターズを彼に」
そこにもう一人ディズニー好きの常連さんが加わり、
3杯目をおごってもらい、
次来た常連さんから
俺からも「マスター彼に何か」
とミックはカウンターの常連さんに計4杯ご馳走になりすっかり上機嫌となり
帰っていった。
彼が帰った後にみなさん口をそろえて
『あれ、ウソっぽいよね』
そこでマスターが一言「今日って確かエイプリルフールですよね」
完璧にミックに“やられた”と思いましたが、不思議とそんなイヤな感じはしなかったが、
後味にビターズの苦味が舌にしみていく日であった。